尿路結石

尿路結石とは

尿は腎臓でつくられた後、尿管を通って膀胱に一時的に溜められ、尿道を通って体外に排泄されます。この尿の通り道を尿路と呼び、尿路のいずれかでできる結石を尿路結石といいます。

結石の成分は様々で、最も多いのはカルシウム結石(シュウ酸カルシウムやリン酸カルシウム)で、全体の約80%を占めます。その他に尿酸結石、シスチン結石、感染結石などがあります。

尿路結石は男性に多く見られ、特に30~50代の働き盛りの男性に好発します。女性にも発症しますが、男性の約3分の1程度の頻度です。また、夏季に患者数が増加する傾向があり、これは発汗により尿が濃縮されることや、水分摂取不足が関係していると考えられています。

結石が詰まりやすい部位は、尿管の生理的狭窄部である腎盂尿管移行部、尿管が骨盤の骨と交差する部分、膀胱尿管移行部の3箇所です。これらの部位で結石が詰まると、激しい痛みとともに様々な症状が現れます。

尿路結石の症状

尿路結石の最も特徴的な症状は、突然始まる激しい痛みです。この痛みは「疝痛」と呼ばれ、間欠的に強弱を繰り返しながら持続します。多くの患者さんが「今まで経験したことのない激痛」と表現されます。

痛みの特徴

痛みは通常、背中から脇腹にかけて始まり、下腹部や外陰部に向かって放散します。結石の位置により痛みの場所が変化し、結石が尿管の上部にある場合は背中や脇腹の痛みが強く、下部にある場合は下腹部や外陰部の痛みが目立ちます。また、時間の経過とともに痛みの場所が体の上の方から下に移動するのも特徴的です。

痛みは波のように強弱を繰り返し、強い痛みの時は動くことも困難になります。痛みのために同じ姿勢を保てず、床を転げ回るような激しい痛みを訴える方も少なくありません。通常の鎮痛薬では効果が不十分なことが多く、医療機関での適切な痛み止めが必要になります。

その他の症状

血尿も尿路結石の重要な症状の一つで、約90%の患者さんに見られます。肉眼的血尿(目で見てわかる血尿)から顕微鏡的血尿(検査でのみわかる血尿)まで程度は様々ですが、多くの場合は尿検査により血尿が確認されます。

吐き気や嘔吐を伴うことも多く、これは激しい痛みや神経の反射によるものです。また、頻尿や残尿感、排尿時痛なども現れることがあり、特に結石が膀胱に近い部分にある場合に顕著になります。

発熱を伴う場合は、尿路感染症の合併を示唆する重要なサインです。結石により尿の流れが阻害されると細菌感染が起こりやすくなり、重篤な腎盂腎炎に進行するリスクがあるため、緊急性の高い状態として対応が必要です。

尿路結石の診断

尿路結石の診断は、特徴的な症状と画像検査を組み合わせて行います。

まず尿検査を行い、血尿の有無や感染の兆候を確認します。血液検査では炎症反応や腎機能を評価し、結石による腎臓への影響や感染の程度を把握します。

画像検査では、超音波検査により結石の有無、尿管の拡張、腎臓の腫れ(水腎症)の有無を確認します。さらに詳しい評価が必要な場合は、CTスキャンや静脈性腎盂造影などの精密検査を行います。これらの検査により、結石の位置、大きさ、数を正確に把握し、最適な治療方針を決定します。

診断においては、他の疾患との鑑別も重要です。急性虫垂炎、胆石発作、腰椎疾患などとの区別が必要で、総合的な判断により正確な診断を行います。

尿路結石の治療

尿路結石の治療は、結石のサイズ、位置、症状の程度、患者さんの全身状態を総合的に判断して決定します。治療の基本方針は、痛みの管理、結石の排出促進、合併症の予防の3つです。

保存的治療

直径10mm未満の結石や症状が軽い場合は、まず保存的治療を行います。十分な水分摂取により尿量を増やし、結石の自然排出を促します。一日2リットル以上の水分摂取を目標とし、特に就寝前と起床時の水分補給を心がけます。

痛みに対しては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痙薬を使用します。激しい痛みの場合は、より強力な鎮痛薬や座薬を使用することもあります。痛みのコントロールは患者さんの苦痛軽減だけでなく、結石の排出促進にも効果があります。

結石の排出を促進する薬剤として、α遮断薬や尿管蠕動促進薬を使用することがあります。これらの薬剤により尿管の筋肉が弛緩し、結石が排出されやすくなります。

外科的治療

結石が大きい場合(通常10mm以上)、保存的治療で改善しない場合、感染を伴う場合などは、より積極的な治療が必要になります。当クリニックでは、患者さんの状態を評価し、必要に応じて泌尿器科専門医への紹介を行います。

現在主流となっている治療法には、体外衝撃波結石破砕術(ESWL)、尿管鏡による結石除去術、経皮的腎結石除去術などがあります。これらの治療法は、結石の位置や大きさ、患者さんの状態に応じて選択されます。

尿路結石の予防

尿路結石は再発しやすい疾患で、一度発症した方の約50%が10年以内に再発するとされています。そのため、再発予防は非常に重要で、生活習慣の改善により再発リスクを大幅に減らすことができます。

水分摂取の重要性

最も重要な予防法は十分な水分摂取です。一日2~3リットルの水分を摂取し、尿量を2リットル以上に保つことで、結石の形成を防ぐことができます。特に夏季や運動時は発汗により脱水しやすいため、より積極的な水分補給が必要です。

水分の種類にも注意が必要で、水やお茶が推奨されます。糖分の多い飲料やアルコールの過剰摂取は避け、特にビールは尿酸値を上昇させるため注意が必要です。

食事療法

シュウ酸を多く含む食品(ほうれん草、タケノコ、紅茶、チョコレートなど)、尿酸値をあげてしまう食品(レバー、あん肝、魚卵、ビールなど)の過剰摂取は控えましょう。シュウ酸や尿酸は結石の元となり、結石ができやすくなります。

また、十分なカルシウムの摂取が推奨されています。カルシウムは、腸内で結石の元となるシュウ酸と結合し、シュウ酸の再吸収を抑制することで尿路結石の発生を予防する効果があります。

緊急時の対応

尿路結石では、以下のような症状が現れた場合は緊急性が高く、速やかな医療機関への受診が必要です。発熱を伴う激しい痛み、全く尿が出ない状態、持続する激痛で鎮痛薬が効かない場合、意識がもうろうとする状態などです。

特に発熱を伴う場合は、尿路感染症の合併により敗血症に進行するリスクがあるため、緊急治療が必要です。また、両側の尿路結石や片腎の患者さんでの尿路結石は、腎不全のリスクがあるため特に注意が必要です。

当クリニックでの尿路結石の診療

当クリニックでは、尿路結石の診断から初期治療まで、迅速かつ適切な医療を提供しています。激しい痛みでお困りの患者さんに対して、まず痛みの軽減を最優先に治療を行います。

診断確定後は、結石の大きさや位置、患者さんの状態に応じて最適な治療方針を提案いたします。保存的治療で経過観察が可能な場合は外来での管理を行い、専門的な治療が必要な場合は適切な医療機関への紹介を速やかに行います。

また、再発予防のための生活指導も重要な診療内容の一つです。水分摂取や食事指導、定期的な検査による経過観察を通じて、患者さんの長期的な健康管理をサポートいたします。

突然の激しい背中の痛みや脇腹の痛み、血尿が見られる方、以前に尿路結石の既往がある方で同様の症状が現れた場合、痛みに加えて発熱がある方は、尿路結石の可能性があります。お早めに当クリニックにご相談ください。迅速な診断と適切な治療により、痛みの軽減と合併症の予防に努めています。

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