健康診断は、現在の健康状態を調べ、病気の早期発見や早期治療、予防につなげることを目的とした制度です。症状が出る前に身体の異常を発見できるため、重大な病気を未然に防いだり、早期段階で対処したりすることができます。
現代社会では生活習慣病が増加しており、これらの多くは初期には自覚症状がないまま進行します。定期的な健康診断を受けることで、こうした「静かに進行する病気」を早い段階で発見し、適切な対応を取ることが可能になります。
当クリニックでは、患者さん一人ひとりの年齢や生活状況に合わせた健康診断を実施し、健康管理をサポートしています。
健康診断の種類
健康診断にはさまざまな種類がありますが、主に以下のように分類されます。
職場や学校で義務付けられている健康診断
- 法定健診:雇い入れ時と年に1回の定期健康診断
- 特定健康診査:40歳〜74歳の方を対象とした、メタボリックシンドロームに着目した健診
- 学校健康診断:学校保健安全法に基づき、生徒・学生に実施される健診
個人の希望で受ける健康診断(任意健診)
- 人間ドック:より詳細な検査項目を含む総合的な健康診断
- 脳ドック:脳疾患の早期発見に特化した人間ドック
- レディースドック:女性特有の疾患に特化した人間ドック
- がん検診:特定のがんを対象とした検診(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、子宮頸がんなど)
健康診断で行われる主な検査項目
健康診断には一般的な基本項目と、オプションで追加できる検査があります。ここでは、標準的な健康診断に含まれる主な検査項目をご紹介します。
問診・診察
- 問診:現在の健康状態や既往歴、生活習慣などについての聞き取り
- 身体測定:身長、体重、BMI(体格指数)、腹囲測定
- 血圧測定:高血圧のスクリーニング
- 視力検査:近見視力・遠見視力の測定
- 聴力検査:特定の周波数の音が聞こえるかを確認
胸部検査
- 胸部X線検査:肺や心臓の状態を確認
- 心電図検査:心臓の電気的活動を記録し、不整脈や心筋梗塞などを調べる
血液検査
- 血液一般検査:赤血球数、ヘモグロビン量、白血球数、血小板数など
- 肝機能検査:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなど
- 腎機能検査:血清クレアチニン、尿素窒素、eGFRなど
- 脂質検査:総コレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪
- 血糖検査:空腹時血糖、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)など
- 尿酸:痛風のリスク評価
尿検査
- 尿蛋白:腎臓の異常を調べる
- 尿糖:糖尿病のスクリーニング
- 尿潜血:腎臓や尿路の出血を調べる
その他の検査(オプションなど)
- 腹部超音波検査:肝臓、胆のう、すい臓、脾臓、腎臓などの状態確認
- 眼底検査:網膜の血管状態を観察
- 便潜血検査:大腸がんのスクリーニング
- 胃部X線検査(バリウム検査):胃がんや胃潰瘍などのスクリーニング
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ検査):食道・胃・十二指腸の直接観察
- マンモグラフィ検査:乳がんのスクリーニング
- 子宮頸がん検診:子宮頸部の細胞検査
- 骨密度検査:骨粗しょう症のスクリーニング
- 頸動脈エコー:動脈硬化の評価
- 脳MRI・MRA検査:脳の状態や血管の異常を調べる
健康診断でわかる主な病気や健康リスク
健康診断の各検査項目から、以下のような病気や健康リスクを発見できます。
生活習慣病関連
- 高血圧:血圧測定で発見
- 脂質異常症:脂質検査で発見
- 糖尿病:血糖検査、尿糖検査で発見
- 肥満:身体測定(BMI、腹囲)で評価
- メタボリックシンドローム:腹囲と血液検査などの組み合わせで評価
臓器別の疾患
- 心疾患:心電図検査、胸部X線検査で異常を発見
- 肺疾患:胸部X線検査で肺がんや肺炎、結核などを発見
- 肝疾患:肝機能検査、腹部超音波検査で脂肪肝や肝炎などを発見
- 腎疾患:腎機能検査、尿検査で腎炎や腎不全などを発見
- 上部消化管疾患:胃部X線検査や胃カメラ検査で胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどを発見
- 下部消化管疾患:便潜血検査で大腸ポリープや大腸がんを発見
- 婦人科疾患:マンモグラフィーや超音波検査での乳がんの発見、超音波検査による子宮頸がんの発見
- 脳疾患:脳MRI検査で脳動脈瘤や血管の狭窄を発見
がん
- 肺がん:胸部X線検査で発見
- 胃がん:胃部X線検査や胃カメラ検査で発見
- 大腸がん:便潜血検査で発見
- 乳がん:マンモグラフィ検査で発見
- 子宮頸がん:子宮頸がん検診で発見
- 前立腺がん:PSA検査で発見
定期的に健康診断を受けるメリット

1. 病気の早期発見・早期治療
多くの病気、特に生活習慣病やがんは、初期段階では自覚症状がないことが多いため、健康診断によってのみ発見できることがあります。早期発見できれば、治療の選択肢が広がり、治療効果も高くなるのです。
2. 治療費・時間の節約
重症化してからの治療は、費用も時間もかかることが多くなります。定期的な健康診断で早期に対処することで、経済的・時間的な負担を軽減可能です。
3. 自分の健康状態の把握
定期的に健康診断を受けることで、自分の健康状態の変化を経年的に把握できます。検査数値の変化からリスクを予測し、予防的な対応が可能になります。
4. 健康意識の向上
健康診断の結果を知ることで、生活習慣の改善など健康への意識が高まります。特に要注意と指摘された項目があれば、具体的な改善目標にもなるでしょう。
5. 家族への安心感の提供
自分自身だけでなく、家族に対しても安心感を与えられます。特に扶養家族を持つ方にとって、自分の健康管理は家族への責任でもあります。
健康診断を受ける際の注意点

検査前の注意
- 食事制限:血液検査の正確性を高めるため、前日夜から絶食が必要な場合があります
- 服薬:普段服用している薬がある場合は、事前に医療機関に相談しましょう
- 生活習慣:検査前日の飲酒や激しい運動は控えるのが望ましいです
健康診断当日の持ち物
- 健康保険証
- 問診票(事前に送付されている場合)
- 過去の健診結果(比較のため)
- 眼鏡やコンタクトレンズ(使用している方)
- お薬手帳(服薬中の方) など
結果の確認と活用
- 結果票が届いたら、必ず内容を確認しましょう
- 要精密検査や要治療の指摘があった場合は、速やかに医療機関を受診しましょう
- 経年変化を確認するため、過去の結果と比較することも大切です
健康診断で「要再検査」と言われたら
健康診断で「要再検査」「要精密検査」などの判定を受けた場合、多くの人が不安を感じるものです。しかし、これは必ずしも重大な病気があるということではなく、より詳細な検査が必要だということを意味します。
再検査を先送りしがちな理由
- 「忙しくて時間がない」
- 「症状がないから大丈夫だろう」
- 「診断結果が怖い」
これらの理由で再検査を先送りしてしまうことは珍しくありませんが、早期発見・早期治療のチャンスを逃してしまう可能性があります。
再検査を受けるメリット
- 異常がない場合は安心を得られる
- 何らかの異常があった場合でも、早期治療が可能になる
- 治療が必要な場合、軽症のうちに対処できる
「要再検査」の指摘があった場合は、できるだけ早く専門医療機関を受診することをおすすめします。当クリニックでは、再検査が必要な場合の紹介状発行や専門医療機関の案内もサポートしています。
まとめ – 健康診断で健やかな未来を
健康診断は、病気の早期発見や予防につながる重要な健康管理ツールです。自覚症状がなくても定期的に受診することで、将来的な健康リスクを低減し、健やかな生活を送るための基盤を作ることができます。
当クリニックでは、患者さんお一人おひとりの年齢や生活背景、これまでの健康状態に配慮した健康診断を提供しています。検査結果についても丁寧に説明し、必要に応じて生活習慣のアドバイスや適切な医療機関の紹介を行っています。
「最近健康診断を受けていない」「検査結果の見方がわからない」という方も、お気軽にご相談ください。皆様の健康維持・増進のお手伝いをさせていただきます。