近年、日本人の健康課題として注目されている高血圧。国内の調査では、成人の約3人に1人が該当するとも言われています。血管に負担をかけ続けるこの状態は、静かに進行することから早期の対応が大切です。このページでは、高血圧について理解を深め、日々の暮らしで実践できる対策や当院での診療内容をご案内します。
血圧とその異常値について
血管の中を流れる血液が血管壁を押す力を血圧と呼びます。この数値が継続的に基準より高い状態が「高血圧」です。診察室での測定値が140/90mmHg以上の場合、高血圧と判断されることが一般的です。
多くの場合、症状が現れにくいのが特徴で、気づかないうちに体の様々な部分に負担がかかり続けます。
血圧の分類は下記のように区分されています。
血圧の区分表
分類 | 診察室血圧(mmHg) | ||
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | ||
正常血圧 | 120未満 | かつ | 80未満 |
正常高値血圧 | 120-129 | かつ | 80未満 |
高値血圧 | 130-139 | かつ/または | 80-89 |
Ⅰ度高血圧 | 140-159 | かつ/または | 90-99 |
Ⅱ度高血圧 | 160-179 | かつ/または | 100-109 |
Ⅲ度高血圧 | 180以上 | かつ/または | 110以上 |
分類 | 家庭血圧(mmHg) | ||
収縮期血圧 | 拡張期血圧 | ||
正常血圧 | 115未満 | かつ | 75未満 |
正常高値血圧 | 115-124 | かつ | 75未満 |
高値血圧 | 125-134 | かつ/または | 75-84 |
Ⅰ度高血圧 | 135-144 | かつ/または | 85-89 |
Ⅱ度高血圧 | 145-159 | かつ/または | 90-99 |
Ⅲ度高血圧 | 160以上 | かつ/または | 100以上 |
なぜ血圧が上がるのか
高血圧の原因は主に二つに分けられます。
原発性(本態性)高血圧
高血圧全体の9割を占め、はっきりとした単一の原因を特定できないタイプです。関連する要素として以下が挙げられます。
- 家族の病歴
- 塩分摂取過多
- 体重増加
- 日常的な運動の欠如
- 心理的なプレッシャー
- たばこの習慣
- アルコールの多量摂取
二次性高血圧
全体の約1割に相当し、何らかの疾患や服用中の薬が原因となっているタイプです。
- 腎臓の病気
- ホルモンバランスの異常
- 睡眠中の呼吸障害
- 医薬品の影響(ステロイド剤、消炎鎮痛剤など)
放置すると起こりうる問題
高血圧を治療せずにそのままにしておくと、動脈硬化をきたし、様々な健康上の問題につながる恐れがあります。
心臓への影響
- 心臓発作
- 胸部の痛み
- 心機能の低下
- 大動脈の裂傷(大動脈解離)
脳への影響
- 脳の血管詰まり
- 脳の出血
- 脳の血管こぶ(脳動脈瘤)
その他の影響
- 腎機能の低下
- 目の網膜障害
- 手足の血行不良
これらの合併症は命に関わることもあるため、高血圧の早期発見と適切な対処が非常に重要となります。
日々の生活での対策法

高血圧の予防や改善には、毎日の習慣を見直すことが効果的です。継続的に取り組むことで、血圧値の正常化や薬の量を減らせる可能性もあります。
塩分控えめの食生活
日本人の塩分摂取量は、推奨される量(男性7.5g未満/日、女性6.5g未満/日)を上回る傾向があるため、以下のような食事への配慮が必要です。
- 調味料は量りながら使う
- だしの風味を活かした調理
- 加工食品の頻度を減らす
- 素材本来の味わいを大切にする
バランスのとれた食事内容にする
- 野菜や果物からのミネラル摂取
- 動物性脂肪を控えめに
- 無理のない体重管理
- 食物繊維を意識した食品選び
定期的な体を動かす習慣
息が少し上がる程度の運動を週に3~5回、30分程度続けることが望ましいとされています。
- 息が切れない程度の速さで一定以上の時間歩く
- 水の中での運動
- 自転車での移動
- ゆっくりとした走り方
ただし中等度以上の高血圧がある方は、医師に相談してから運動を始めることをお勧めします。
その他の生活面での工夫
- 禁煙を心がける
- お酒は程々に(日本酒なら1合程度)
- 十分な睡眠時間の確保
- ストレスとの付き合い方
家庭での血圧測定について
病院での測定に加え、ご自宅での定期的な血圧チェックが管理において非常に大切です。
正確な測り方のコツ
- 測る前に5分ほど安静にする
- 背筋を伸ばして座り、腕を心臓と同じ高さに
- 朝(起床後、トイレ後、食前、薬前)と夜(寝る前)の2回
- 続けて2~3回測り、平均を記録する
ご家庭での測定値は135/85mmHg未満が目標とされており、診察室での基準とは少し異なります。
当院での診療について

当院では、一人ひとりの生活環境や症状に合わせた高血圧治療を提供しています。
診療の基本姿勢
- 詳しくお話を伺い、検査で原因を探る
- 生活習慣の見直しをサポートし、定期的に状態を確認
- 必要に応じて適切なお薬を処方
- 合併症予防を含めた総合的な健康管理
実施している主な検査
- 血圧測定(診察時、必要に応じて24時間測定)
- 血液・尿の検査
- 心電図検査
- 眼底の状態確認
- 腎機能の評価
- 状況に応じた画像検査
お薬による治療について
生活習慣の改善だけでは血圧が十分に下がらない場合、以下のような降圧剤を用いた治療を行います。
- カルシウム拮抗薬
- ARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)
- ACE阻害薬
- 利尿薬
- β遮断薬
当院では副作用を最小限に抑えながら効果的な血圧コントロールを目指し、患者さんに合った薬剤選択を行っています。
定期的な受診の大切さ
高血圧は自覚症状が少ないため、血圧が安定していると感じても自己判断で通院をやめることはお勧めできません。継続的な血圧測定と定期検査によって、合併症の早期発見や予防が可能になります。
当院では、通院しやすいスケジュール調整を心がけ、お忙しい方でも継続的な管理ができるよう配慮しています。
おわりに
高血圧は自覚症状が現れにくく進行しながら、様々な合併症を引き起こす可能性がある健康課題です。しかし、早めに発見して適切に管理すれば、健やかな日々を長く続けることができます。
当クリニックでは、単に数値を下げるだけでなく、患者さんの生活の質を大切にした高血圧治療を心がけています。血圧のことでご心配な方は、どうぞお気軽にご相談ください。
定期的な健康チェックと家庭での血圧測定を習慣にして、いきいきとした毎日をお過ごしください。