脳出血

脳出血について

脳出血は、脳内の血管が破れることで脳の組織の中に血液があふれ出るタイプ(脳内出血)と、脳の表面にある血管にできた動脈瘤が破裂するタイプ(クモ膜下出血)があります。また、頭の外傷などによって生じる、硬膜外血腫や硬膜下血腫という病気もあります。出血した血液が血の塊(血腫)となって脳を圧迫し、様々な症状を引き起こします。脳梗塞とは違って、血管が詰まるのではなく破れることで起こるため、症状の現れ方も異なります。

脳内出血が起こりやすい場所は決まっており、被殻出血が最も多く、次に多いのが視床出血で、小脳出血と、脳幹出血がそれに続きます。出血する場所によって症状や重症度が大きく変わるのが特徴です。

年齢的には50~70代に多く見られますが、若い方でも血管の奇形などが原因で起こることがあります。男性の方が女性よりもやや多く、冬の寒い時期や血圧が上がりやすい朝の時間帯に多く起こる傾向があります。

脳出血の一番の原因は高血圧です。長年にわたって高い血圧が続くことで、脳の細い血管に負担がかかり、血管の壁が弱くなって破れやすくなります。その他の原因として、脳動静脈奇形、脳動脈瘤、血液をサラサラにする薬の影響、肝臓病、血液の病気などがあります。

脳出血の症状

脳出血の症状は、出血した場所や量によって大きく変わります。軽い出血では軽微な症状しか現れないこともありますが、出血量が多いと生命に関わる重篤な症状が現れることもあります。症状は通常、突然現れることが多いのが特徴です。

頭痛

脳出血で最もよく見られる症状の一つが激しい頭痛です。「今まで経験したことのない頭痛」「ハンマーで殴られたような頭痛」と表現されるほど強烈な痛みが突然始まります。普通の頭痛薬では全く効かず、時間が経っても改善しないことが多いです。

頭痛は出血した場所に関係なく現れることが多く、頭全体が痛んだり、後頭部が特に痛んだりします。吐き気や嘔吐を伴うことも多く、光をまぶしく感じることもあります。

意識障害

出血量が多い場合や、大切な部分に出血が起こった場合は、意識レベルが下がります。軽い場合はぼんやりとした状態になり、重い場合は昏睡状態になることもあります。完全に意識を失うこともあれば、呼びかけには反応するけれども普段とは様子が違うという程度のこともあります。

意識障害は脳出血の重症度を示す重要なサインで、意識レベルが低いほど生命に危険が及ぶ可能性が高くなります。家族の方が声をかけても反応が鈍い、いつもと様子が違うという場合は注意が必要です。

運動麻痺

脳出血では、体の片側の手足に麻痺が現れることがよくあります。右脳に出血が起こると左半身に、左脳に出血が起こると右半身に麻痺が現れます。麻痺の程度は出血の場所や量によって様々で、完全に動かなくなることもあれば、力が入りにくい程度のこともあります。

手の麻痺では物を持てなくなったり、足の麻痺では歩けなくなったりします。顔の麻痺が起こると、口角が下がったり、よだれが出たりすることもあります。麻痺は出血直後から現れることが多く、時間が経つにつれて症状が進行することもあります。

言語障害

言葉に関する部分に出血が起こると、話すことや理解することが困難になります。言いたいことはわかっているのに言葉が出てこない、ろれつが回らない、相手の話が理解できないなどの症状が現れます。

軽い場合は少し話しにくい程度ですが、重い場合は全く話せなくなったり、意味不明な言葉を話したりすることもあります。文字を読んだり書いたりすることも難しくなる場合があります。

その他の症状

出血した場所によって、様々な症状が現れることがあります。小脳出血では激しいめまいやふらつき、嘔吐が主な症状となります。脳幹出血では呼吸や心拍に異常が現れることがあり、非常に危険な状態になります。

けいれん発作が起こることもあり、特に大脳皮質に近い部分の出血で見られることがあります。また、視野の異常や物が二重に見えるなどの視覚症状が現れることもあります。

ご高齢の方で、急にもの忘れがひどくなった、なんとなくぼんやりしている、徐々に歩くことができなくなった、などの症状が出た場合、慢性硬膜下血腫の可能性が考えられます。

脳出血の診断

脳出血の診断では、症状の現れ方と画像検査が決定的に重要になります。当クリニックでは、患者さんやご家族から症状の経過を詳しくお聞きし、神経学的な診察を行います。脳出血が疑われる場合は、速やかに専門的な検査が受けられる医療機関への紹介を行います。

CTスキャンは脳出血の診断に最も重要な検査です。出血は白く写るため、脳梗塞との区別が明確にできます。CTスキャンにより、出血の場所、大きさ、脳の圧迫の程度などがわかり、治療方針の決定に役立ちます。

MRI検査はより詳しい情報を得ることができ、古い小さな出血なども発見できます。血管造影検査は、血管の奇形や動脈瘤などの出血原因を調べるのに有用です。

血液検査では、血液の固まりやすさや肝機能、腎機能などを調べます。血液をサラサラにする薬を飲んでいる場合は、その影響を評価することも大切です。

脳出血の治療

脳出血の治療は、出血の量や場所、患者さんの状態によって決まります。軽症の場合は薬による治療が中心となりますが、重症の場合は緊急手術が必要になることもあります。いずれの場合も、できるだけ早い治療開始が重要になります。

保存的治療

出血量が少なく、症状が軽い場合は、手術を行わない保存的治療を選択します。血圧をコントロールして再出血を防ぎ、脳の腫れを抑える薬を使用します。安静にして経過を観察し、症状の変化に注意深く対応します。

血圧管理は治療の要で、高すぎると再出血のリスクが高まり、低すぎると脳への血流が不足します。適切な血圧を保つために、血圧を下げる薬を慎重に使用します。

脳の腫れ(脳浮腫)を抑えるために、浸透圧利尿薬やステロイド薬を使用することもあります。けいれんが起こった場合は、抗けいれん薬を使用します。

外科的治療

出血量が多く、血腫による脳の圧迫が強い場合は、緊急手術が必要になります。手術により血腫を取り除き、脳の圧迫を解除します。手術のタイミングや方法は、出血の場所や患者さんの状態によって決められます。

小脳出血や脳幹に近い部分の出血では、少量でも生命に危険が及ぶことがあるため、緊急手術が行われることが多くなります。一方、深部の出血では手術による侵襲が大きいため、保存的治療が選択されることもあります。

リハビリテーション

急性期を過ぎると、失われた機能の回復を目指してリハビリテーションを行います。理学療法、作業療法、言語療法などを組み合わせて、患者さんの機能回復を支援します。

リハビリは早期に始めるほど効果が高いとされており、状態が安定したら速やかに開始します。患者さんの状態や希望に応じて、適切なリハビリ施設への紹介も行います。

脳出血の予防

脳出血の予防で最も大切なのは血圧のコントロールです。高血圧は脳出血の最大の危険因子であり、適切な血圧管理により発症リスクを大幅に下げることができます。

血圧管理

家庭での血圧測定を習慣にし、自分の血圧の状態を把握することが大切です。血圧が高い場合は、生活習慣の改善と必要に応じて薬による治療を行います。目標血圧は年齢や他の病気の有無によって異なりますが、一般的には140/90mmHg未満を目指します。

血圧を下げるための生活習慣として、塩分制限、適度な運動、体重管理、禁煙、節酒などがあります。ストレスも血圧上昇の要因になるため、適切なストレス管理も重要です。

その他の予防策

血液をサラサラにする薬を服用している方は、定期的な検査を受けて適切な用量調整を行うことが大切です。過度の飲酒は血圧上昇や出血リスクの増加につながるため、適量を心がけます。

定期的な健康診断を受け、血圧以外の危険因子(糖尿病、脂質異常症など)もしっかり管理することが予防につながります。脳ドックなどで血管の異常を早期に発見することも有効です。

緊急時の対応

脳出血では、以下のような症状が現れた場合は緊急事態です。突然の激しい頭痛、意識レベルの低下、片側の手足の麻痺、ろれつが回らない、激しいめまいと嘔吐、けいれん発作などの症状です。

このような症状が現れたら、すぐに救急車を呼んでください。「少し様子を見よう」と思わず、迷わず119番通報することが命を救うことにつながります。搬送までの間は、安静にして頭を少し高くし、嘔吐した場合は窒息しないよう横向きにします。

脳出血後の生活

脳出血を起こした後の生活では、再発防止と残存機能の活用が大切になります。多くの方が何らかの後遺症を抱えながらも、適切なサポートと努力により、充実した生活を送っています。

血圧管理は生涯にわたって継続する必要があり、薬の服用と生活習慣の改善を続けます。定期的な医師の診察を受け、血圧や他の危険因子の管理状況をチェックします。

リハビリも継続することが重要で、通院リハビリや訪問リハビリ、デイサービスなど、患者さんの状態に応じて様々な選択肢があります。家族の理解とサポートも回復には欠かせません。

当クリニックでの脳出血の診療

当クリニックでは、脳出血の早期発見から予防、慢性期の管理まで、総合的な医療サービスを提供しています。脳出血が疑われる症状の方には、迅速な診断と専門医療機関への緊急紹介を行います。

脳出血の最大の危険因子である高血圧の管理に特に力を入れています。定期的な血圧測定、薬物治療、生活指導を通じて、患者さんの血圧を適切にコントロールし、脳出血の予防に努めています。

また、脳出血を起こした後の患者さんの長期管理も行っています。再発防止のための血圧管理、定期的な検査、リハビリ施設との連携を通じて、患者さんとご家族をサポートいたします。介護サービスや福祉制度の利用についてもご相談に応じ、安心して生活できるよう総合的な支援を行っています。

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