「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という特徴的な呼吸音とともに、息苦しさに悩まされる喘息。日本には約800万人の患者さんがいると言われ、子どもから大人まで幅広い年齢層に見られる呼吸器疾患です。この記事では、喘息の基本的な仕組みから症状、診察・治療内容、そして日常生活での管理方法まで詳しくご紹介します。
喘息とは?
喘息(気管支喘息)は、気道の慢性的な炎症性疾患です。気道とは、口や鼻から肺へと続く空気の通り道のことで、喘息ではこの気道に以下のような変化が起こります。
喘息で起こる気道の変化
気道の炎症
アレルギー反応などによって気道の壁に炎症が起き、粘膜が腫れて赤くなります。
気道の過敏性亢進
炎症により気道が過敏になり、ちょっとした刺激でも強く反応するようになります。
気道狭窄(きょうさく)
気道の周りにある筋肉が収縮して気道が狭くなり、息苦しさや「ゼーゼー」「ヒューヒュー」といった喘鳴(ぜんめい)と呼ばれる音が出ます。
粘液分泌の増加
炎症によって気道の粘液(痰)が増え、気道を塞いでしまうことがあります。
これらの変化は可逆的(元に戻る)であることが特徴ですが、長期間にわたって適切な治療が行われないと、気道のリモデリング(不可逆的な構造変化)が起こり、呼吸機能が低下することがあります。
喘息の主な原因と誘因
喘息の発症や症状悪化には、さまざまな要因が関わっています。
内因性の要因
遺伝的素因
喘息や他のアレルギー疾患の家族歴がある場合、発症リスクが高まります。
アトピー素因
アレルギー体質(アトピー)の方は喘息を発症しやすい傾向があります。
外因性の誘因
アレルゲン
- 室内ダニやその死骸・糞
- ペットの毛や皮膚のかけら
- カビ
- 花粉
- ゴキブリの死骸・糞
感染
- ウイルス・細菌感染による風邪、副鼻腔炎、上気道炎
刺激物質
- タバコや線香の煙
- 大気汚染物質(PM2.5、黄砂)
- 強い香りや臭い
- 冷たい空気
運動
運動によって誘発される喘息(運動誘発性喘息)もあります。
薬剤
- アスピリンなどの非ステロイド性抗炎症薬
- β遮断薬
その他
精神的なストレスや強い感情、天候や気圧の変化、アルコール摂取などが喘息発作の引き金になることもあります。
自分の喘息の誘因を知り、できるだけ避けることが症状コントロールの第一歩です。
喘息の主な症状
喘息の症状は人によって異なり、季節や時間帯によっても変動します。代表的な症状には以下のようなものがあります。
主要な症状
咳
特に夜間や早朝に悪化することが多く、長く続く乾いた咳が特徴的です。
喘鳴(ぜんめい)
「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という音が特に息を吐くときに聞こえます。
息切れ
息を吸ったり吐いたりするのが難しくなり、特に息を吐くときに苦しさを感じます。
胸の圧迫感
胸が締め付けられるような不快感を覚えることがあります。
喘息発作の重症度
喘息発作は、軽度から重度までさまざまな段階があります。
小発作(軽度)
- 苦しいが横になれる
- 会話はできる
- 動作はやや困難
中発作(中等度)
- 苦しくて横になれない
- 会話が途切れがちになる
- 動作はかなり困難、かろうじて歩ける
大発作(高度)
- 苦しくて動けない
- 会話は困難
- 座っていても息苦しい
重篤
- 意識障害がある
- 呼吸が極めて浅く弱い
- チアノーゼ(唇や爪が青紫色になる)が見られる
重度や致命的な発作が起きた場合は、すぐに救急車を呼ぶべき緊急事態です。
喘息を疑ったら:検査と診断

喘息の診断は、症状の特徴、身体診察、肺機能検査などを組み合わせて総合的に行われます。
基本的な診察
問診
いつから症状があるか、どのような状況で悪化するか、家族歴やアレルギー歴などを詳しくお聞きします。
身体診察
血圧や血中の酸素飽和度を測定します。胸部の聴診を行い、喘鳴の有無や呼吸の状態を確認します。
胸部X線検査
他の呼吸器疾患との鑑別のために行われます。
肺機能検査
スパイロメトリー
肺活量や1秒量(1秒間に吐き出せる空気の量)を測定し、気道閉塞の程度を調べます。
ピークフロー測定
最大呼気流量を測定する簡易検査で、喘息の状態把握や経過観察に役立ちます。
気道可逆性試験
気管支拡張薬を吸入した前後で肺機能を測定し、改善が見られるかを確認します。
呼気一酸化窒素(FeNO)測定
気道の炎症の程度を評価する検査です。
アレルギー検査
血液検査
特異的IgE抗体検査(RAST法など)で、アレルギーの原因物質を特定します。
皮膚プリックテスト
皮膚に少量のアレルゲンを垂らして反応を見る検査です。
これらの検査結果と症状の特徴から、喘息の診断および重症度の評価を行います。
喘息の症状がある場合の受診のタイミング

受診を検討すべき症状
- 夜間や早朝に咳や息苦しさがある
- 運動時に息切れや咳が出る
- 風邪をひくと長引く咳が続く
- 既に喘息と診断されている方で、症状が増えてきた
- 発作治療薬(リリーバー)の使用頻度が増えた
緊急受診が必要な症状
- 発作治療薬を使用しても症状が改善しない
- 息苦しくて会話が困難
- 呼吸が浅く速い
- 唇や爪が青紫色になっている(チアノーゼ)
- 意識がもうろうとしている
特に後者の場合は救急車を呼ぶべき緊急事態です。
まとめ:喘息でお悩みならご相談ください
喘息は、適切な診断と治療により、症状のコントロールと日常生活の質の向上が可能な疾患です。「ただの咳だろう」と思って放置せず、気になる症状があれば早めに受診しましょう。
当クリニックでは、喘息でお悩みの患者さまに対して、丁寧な問診と検査を行い、一人ひとりの生活スタイルや症状に合わせた治療プランをご提案しています。また、正しい吸入手技の指導や生活環境の改善アドバイスなど、日常管理のサポートも行っています。
息苦しさや長引く咳でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。あなたの健やかな呼吸と快適な毎日をサポートします。