貧血

貧血は日本人、特に女性に多い症状です。「少し休めば良くなる」と思って放置していると、思わぬ病気が隠れている可能性もあります。この記事では、貧血の原因や症状、検査・治療についてご紹介します。

貧血とは

貧血とは、血液中の赤血球数やヘモグロビン(酸素を運ぶタンパク質)が減少し、全身に十分な酸素が行きわたらなくなる状態のことです。具体的には以下のような症状があります。

貧血の主な症状

全身の症状

頭部の症状

見た目の変化

これらの症状は貧血の程度や進行速度、原因によって異なります。また、体が貧血に慣れてしまい、重度の貧血でも自覚症状がほとんどない場合もあります。健康診断で「貧血気味です」と言われたことがある方は、症状がなくても一度内科を受診することをお勧めします。

貧血の主な原因と種類

貧血にはいくつかの種類があり、原因も様々です。比較的よく見られる貧血について説明します。

1. 鉄欠乏性貧血

最も一般的な貧血で、体内の鉄分が不足することで起こります。鉄はヘモグロビンの重要な成分であり、鉄が不足すると赤血球の生成に影響が出ます。

主な原因

2. 巨赤芽球性貧血

ビタミンB12や葉酸が不足することで起こる貧血です。これらのビタミンは赤血球の正常な生成に必要です。

主な原因

3. 溶血性貧血

赤血球が正常な寿命(約120日)を全うする前に破壊されることで起こる貧血です。

主な原因

4. 再生不良性貧血

骨髄の機能不全により、血液細胞(赤血球、白血球、血小板)の生成が阻害されて起こる貧血です。

主な原因

5. 腎性貧血

慢性の腎臓病により、造血に必要なエリスロポエチンというホルモンの産生が低下し、貧血が起こります。

貧血の検査と診断

内科で貧血が疑われる場合、以下のような検査が行われます。

血液検査

貧血の診断には血液検査が最も基本的で重要です。主に以下の項目を調べます。

赤血球数とヘモグロビン値
貧血かどうかを判断する基本的な指標です。一般的に、成人男性ではヘモグロビン値が13g/dL未満、成人女性では12g/dL未満の場合に貧血と診断されます。

赤血球指数(MCV、MCH、MCHC)
赤血球の大きさや色素量を示す指標で、貧血の種類を判断するのに役立ちます。

網状赤血球数
若い赤血球の割合を示し、骨髄での赤血球生成能力を評価します。

鉄関連検査(血清鉄、フェリチン、TIBC等)
体内の鉄の状態を評価し、鉄欠乏性貧血かどうかを判断します。

ビタミンB12、葉酸
巨赤芽球性貧血の有無を調べます。

その他の項目
貧血の原因によっては、炎症マーカー、腫瘍マーカー、腎機能、肝機能、甲状腺機能、溶血の指標なども調べることがあります。

その他の検査

貧血の原因によっては、以下のような追加検査が必要になることもあります。

便潜血検査
消化管からの出血を調べます。

胃カメラ・大腸カメラ
消化管からの出血源を特定するために行うことがあります。

骨髄検査
造血機能を直接評価するために行う検査です。再生不良性貧血や、血液疾患が疑われる場合に実施されます。

これらの検査結果をもとに、貧血の種類や原因を特定し、適切な治療方針を決定します。

貧血の治療法

貧血の治療は、原因によって異なります。主な治療法について説明します。

1. 鉄欠乏性貧血の治療

鉄剤の投与
鉄剤の内服が基本ですが、症状が重い場合や経口摂取が難しい場合は、静脈内投与を行うこともあります。

原因治療
出血源がある場合(消化管からの出血や月経による出血など)は、その治療も平行して行います。

食事指導
鉄分を多く含む食品の摂取を勧めます。(レバー、赤身肉、ほうれん草、小松菜など)

2. 巨赤芽球性貧血の治療

ビタミンB12・葉酸の補充
不足しているビタミンを補充します。ビタミンB12は吸収障害がある場合、注射による投与が必要になることもあります。

食事指導
ビタミンB12や葉酸を多く含む食品(肉、魚、緑黄色野菜など)の摂取を勧めます。アルコールを多飲している方には禁酒を指導します。 

3. 溶血性貧血の治療

原因除去
薬剤が原因の場合は、その薬剤の中止を検討します。

ステロイド療法
自己免疫性溶血性貧血では、免疫抑制のためにステロイド治療を行うことがあります。

輸血
症状が重い場合は輸血を行うことがあります。

4. 慢性疾患に伴う貧血の治療

基礎疾患の治療
慢性腎臓病や炎症性疾患、腫瘍性病変など、基礎疾患の治療が貧血改善の鍵となります。

エリスロポエチン製剤
特に腎性貧血では、赤血球生成を促進するエリスロポエチン製剤を使用することがあります。

<h3>5. 再生不良性貧血の治療

重症度や年齢によって治療法が異なり、専門医による治療が必要になることがほとんどです。

免疫抑制療法
自己免疫反応が原因と考えられる場合に行います。

造血幹細胞移植
若年者の重症例では、根治を目指して造血幹細胞移植を検討することがあります。

輸血療法
症状緩和のために赤血球や血小板の輸血を行うことがあります。

貧血の予防と生活上の注意点

貧血を予防するためには、以下のような点に注意しましょう。

食事面での対策

鉄分を多く含む食品を積極的に摂る

ビタミンCと一緒に摂る
ビタミンCは鉄の吸収を高めます。鉄分を含む食品と一緒に柑橘類やトマト、ブロッコリーなどを摂ることをお勧めします。

ビタミンB12・葉酸を含む食品を摂る

生活習慣の改善

十分な睡眠をとる
睡眠不足は貧血の症状を悪化させることがあります。

適度な運動を行う
過度な運動は避け、自分のペースで無理のない運動を心がけましょう。

ストレスを管理する
慢性的なストレスは、様々な健康問題の原因になります。リラックスする時間を意識的に作りましょう。

貧血が疑われる場合の受診のタイミング

以下のような場合は、早めに内科を受診することをお勧めします。

受診を検討すべき症状

緊急受診が必要な症状

また、貧血と診断された後も、以下のような場合は再受診が必要です。

再受診が必要な場合

まとめ:貧血でお悩みならご相談ください

貧血は単なる疲れではなく、様々な病気のサインかもしれません。特に原因不明の貧血や、治療しても改善しない貧血は、重大な疾患が隠れている可能性があります。

当院では、貧血でお悩みの患者さまに対して、丁寧な問診と適切な検査を行い、一人ひとりの症状や生活背景に合わせた治療プランをご提案しています。「ちょっと疲れているだけ」と自己判断せずに、お気軽に受診ください。

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