粘膜下腫瘍

粘膜下腫瘍とは

粘膜下腫瘍とは消化管(食道、胃、小腸、大腸など)の粘膜の下にある「粘膜下層」やそれより深い層にできる腫瘍の総称です。表面を覆う粘膜はほぼ正常なため、内視鏡検査で見ると、粘膜面が膨らんで盛り上がったような形に見えます。

粘膜下腫瘍の多くは良性ですが、中には悪性のものや、良性でも時間の経過とともに悪性化する可能性があるものがあります。特に時間の経過にともなって大きくなる場合は注意が必要です。

粘膜下腫瘍には主に以下のような疾患があります。

消化管間質腫瘍(GIST)

胃や小腸に発生することが多く、悪性化する可能性があるものです。消化管の運動を制御するカハールの介在細胞から発生するとされています。

平滑筋腫・平滑筋肉腫

筋肉の細胞から発生する腫瘍で、平滑筋腫は良性、平滑筋肉腫は悪性です。食道や胃に多く見られます。

神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)

神経の鞘(さや)を形成する細胞から発生する良性腫瘍です。

脂肪腫

脂肪細胞からなる良性腫瘍で、やわらかく、大きくなることがあります。

神経内分泌腫瘍

ホルモンを分泌する内分泌細胞から発生する腫瘍です。小さくても転移する可能性があるため、注意が必要です。

異所性膵

膵臓の組織が本来あるべき場所とは異なる臓器(主に胃や十二指腸)に存在し、粘膜下腫瘍の形態をとった状態です。

粘膜下腫瘍の症状

粘膜下腫瘍の多くは、特に小さいうちは無症状であることが多く、検診や他の疾患の検査の際に偶然発見されることがほとんどです。しかし腫瘍が大きくなると、腹部の不快感や腹痛などの消化器症状が出ることがあります。

悪性化するような病気では、体重減少、出血、貧血などの症状が現れることがあります。また神経内分泌腫瘍では、セロトニンといったホルモンを過剰に分泌するようになるため、その影響で顔面紅潮、下痢、喘息様発作などの「カルチノイド症候群」と呼ばれる特有の症状を引き起こすことがあります。

粘膜下腫瘍の診断

粘膜下腫瘍の診断には、以下のような検査が用いられます。

内視鏡検査

粘膜下腫瘍は、表面が正常な粘膜で覆われた、粘膜の下から押し上がるように隆起した病変です。上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)や大腸内視鏡検査で、消化管内部を直接観察することによって発見できます。ただし通常の内視鏡検査だけでは、発見はできても原因となるそれぞれの病気の診断や、良悪性の判断が難しいことがあります。

超音波内視鏡検査(EUS)

内視鏡の先端に超音波装置を付けた特殊な内視鏡を用いて、腫瘍の内部構造や大きさ、腫瘍が発生する層などを詳しく観察し、どの病気が疑わしいかの鑑別診断を行います。

超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)

超音波内視鏡を用いて腫瘍に針を刺し、組織を採取する検査です。採取した組織を顕微鏡で調べることで、病気の確定診断や良悪性の診断が可能になります。

CT検査

X線を使って体の断層画像を撮影し、腫瘍の大きさや位置、周囲の組織への浸潤の有無、転移の有無などを評価します。

MRI検査

磁気を利用して体の断層画像を撮影する検査です。軟部組織のコントラストに優れており、腫瘍の性状をより詳細に評価できます。

血液検査

腫瘍マーカーや全身状態の評価のために行われます。

これらの検査結果を総合的に判断して、粘膜下腫瘍の種類、大きさ、悪性度などが評価されます。

粘膜下腫瘍の治療法

粘膜下腫瘍の治療は、腫瘍の種類、大きさ、発生部位、悪性度などによって異なります。

経過観察

小さな粘膜下腫瘍(特に2cm未満)で、超音波内視鏡検査などで悪性を示唆する所見がない場合には、定期的な内視鏡検査などによる経過観察が選択されることがあります。経過観察の間隔は通常1年ごとですが、腫瘍の特性によって個別に判断されます。

内視鏡的切除

粘膜下層や固有筋層に限局する比較的小さな腫瘍の場合、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの内視鏡的治療が選択されることがあります。

腹腔鏡下手術

腹腔鏡(おなかに小さな穴を開けて挿入する細い管状の医療機器)を用いた低侵襲手術です。胃のGISTなどでは、腫瘍を含む胃の一部(胃部分切除術)を切除することが多いです。

開腹手術

腫瘍が大きい場合や、腹腔鏡では対応が難しい場合には、開腹手術が行われることがあります。

薬物療法

悪性の粘膜下腫瘍(GISTや神経内分泌腫瘍)では、分子標的薬による薬物治療が効果的な場合があります。

治療方針は、患者さんの年齢や全身状態、腫瘍の特性などを総合的に判断して決定されます。特に悪性が疑われる場合や症状がある場合には、早期の治療介入が勧められることが多いです。

当クリニックでの粘膜下腫瘍の診療

当クリニックでは、粘膜下腫瘍の患者さんに対して包括的な医療サービスを提供しています。

内視鏡検査で粘膜下腫瘍が発見された場合、まずは経過観察で良い病変なのか、追加検査が必要な病変なのか、を判断致します。経過観察は通常1年に1回の内視鏡検査で評価します。追加検査が必要な場合は、提携する専門医療機関でCT、超音波内視鏡検査などの検査を手配します。

当クリニックでは、患者さんの不安を軽減し、安心して検査、治療を受けていただけるよう、丁寧な説明と継続的なサポートを心がけています。粘膜下腫瘍に関するご心配事がございましたら、遠慮なくご相談ください。

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