食道癌とは
食道はのどから胃へと続く、食べたものが通る道で、長さ約25cm、内腔は2~3cm程度の管状の臓器です。食道癌は食道の内側を覆う粘膜層に発生する悪性の腫瘍です。
国内では毎年およそ2万人ほどが診断され、中高年の男性に多い傾向があります。主に扁平上皮癌という種類が多く見られますが、腺癌などもあります。食道癌は初期段階では粘膜内にとどまりますが、進行すると食道壁の深い層に浸潤したり、周囲のリンパ節や他の臓器に転移したりするため、早期発見が治癒のカギとなるのです。
食道癌の発症に関わる要素
食道癌の背景にはさまざまな要素が絡み合っています。
- 長年にわたる喫煙
- 日常的な大量の飲酒
- 頻繁に熱い食べ物や飲み物を摂る
- 胃酸の逆流が続く状態
- 食物が通過しにくくなる特定の疾患
特に喫煙と飲酒の両方を習慣にしている方は、食道癌のリスクが高いとされているため、注意が必要です。
食道癌の主な症状
初期の食道癌ではほとんど症状が出ないことが多いですが、進行すると以下のような変化が現れることがあります。
- 食事中に物が通りにくい感覚
- 胸の奥に違和感や痛み
- 原因不明の体重減少
- 声に変化が生じる
- 食後の不快感
特に食べたものが「喉に引っかかる」、「胸につかえる」という感覚は、食道癌の特徴的な症状のひとつです。最初は固形物のみですが、進むと液体でも同様の感覚が生じることがあります。
食道癌の検査、診断の方法

食道癌を調べるうえでまず行う検査は、内視鏡検査(胃カメラ)です。内視鏡検査で食道内をくまなく観察し、食道癌を疑う病変が見つかった場合、組織を採取(生検)し病理検査を行います。これで癌細胞が認められれば、食道癌と診断されます。
その他、バリウム検査、CT検査などを行い、病変の範囲、進展の程度、転移の有無などを総合的に評価し、治療方針の決定を行います。
血液検査では、貧血の有無や、栄養状態、腫瘍マーカー(SCCなど)の測定を行います。ただし、腫瘍マーカーは早期の病変では上昇しないことも多く、スクリーニング検査としては限界があります。
食道癌の治療法
食道癌の治療は、病期や全身状態に応じて選択されます。
癌の深達度が粘膜層に留まる病変、もしくは粘膜より深い層にわずかに進展した病変、では内視鏡での治療が適応となります。
内視鏡を用いた治療が可能な場合、特殊な器具で粘膜を切除し、体への負担を抑えながら治療できます。
さらに進行した食道癌では、
- 外科的手術による切除
- 放射線を用いた治療
- 化学療法(抗癌剤)
のいずれか、もしくは組み合わせた治療が選択されます。どの治療法を選ぶかは、患者さんの年齢や全身状態、癌の正確な進行度や位置、さらには患者さん自身の希望などを考慮して、多職種の医療チーム(消化器内科医、外科医、放射線科医、腫瘍内科医など)が連携して決定します。
また治療中・治療後の食事や栄養管理も重要で、場合によっては一時的な栄養補給路の確保(胃瘻など)が必要になることもあります。
どの治療法が最適かは個々の患者さんの状況によって異なりますので、担当医との十分な相談が大切です。
その他、症状を和らげる緩和治療も、上記の積極的な癌治療と並行して行われます。
当クリニックでの食道癌の診療
当クリニックでは、食道癌の早期発見・早期治療を目指して、以下のような診療を行っています。
食道癌検査
内視鏡検査
最新の内視鏡機器を導入し、鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査を心がけています。経鼻内視鏡(鼻から挿入する細い内視鏡)も対応可能です。
治療および医療連携
食道癌と診断された場合、どの治療が適応となるかを判断し、必要に応じて専門医療機関をご紹介し、診断から治療後のフォローアップまで一貫したサポートを行います。
患者さんへのサポート
食道癌と診断された患者さんやそのご家族の不安やご質問にきめ細かく対応し、治療選択や療養生活についてのアドバイスを行います。また、治療後の食事指導や生活指導も行っています。

おわりに
食道癌は早期発見が重要です。リスク要因がある方は生活改善と定期検査を意識しましょう。医療の進歩により、食道癌の診断技術や治療法は日々向上しています。適切な医療を受けることで、多くの方が回復への道を歩んでいます。
健康維持のため、食道癌への理解を深め、予防と早期発見に努めましょう。不安や疑問があれば、当クリニックにご相談ください。