総胆管結石

総胆管結石とは

総胆管結石は胆石症の一種で、総胆管に結石が存在する状態です。総胆管は肝臓内の細い胆管が合流して形成される太い管で、膵臓を貫通して十二指腸乳頭部に開口します。総胆管は胆汁の通り道(メインストリート)で、総胆管の脇に合流する、胆汁を貯めておく袋状の臓器を胆嚢と呼びます。総胆管結石は、胆嚢の中で形成された結石が総胆管に落下してくるタイプと、総胆管の中で形成されるタイプがあります。結石が形成される原因としては、胆汁中のコレステロール濃度上昇、胆汁の細菌感染、胆汁の流れの停滞、など様々です。総胆管結石は中高年に多く見られる疾患で、結石のサイズは数ミリから数センチまで様々で、単発のこともあれば多発することもあります。

総胆管結石の症状

総胆管結石の症状は結石の大きさや位置、胆管の閉塞程度によって大きく異なります。小さな結石で胆管の閉塞が軽度な場合は無症状のこともありますが、多くの場合は特徴的な症状が現れます。

最も特徴的な症状は右上腹部から心窩部にかけての激しい痛みです。痛みは突然始まることが多く、持続時間は数十分から数時間に及ぶこともあります。

結石によって胆管が閉塞し、胆汁の流れが悪くなると、黄疸が出現します(これを閉塞性黄疸と呼びます)。黄疸とは眼球結膜や皮膚が黄染する症状で、尿の色が紅茶のように濃くなったり、便の茶色が薄くなるといった変化も見られます。停滞した胆汁に細菌が感染すると胆管炎を発症し、高熱が出ることがあります。胆管炎は全身に細菌がまわる敗血症を引き起こし、意識障害、血圧低下、多臓器不全などの重篤な症状が現れることもあります。また、総胆管結石は膵臓の管を閉塞することもあり、その場合急性膵炎を発症することもあります。

総胆管結石の診断

総胆管結石の診断には、症状と身体所見に加えて、血液検査と画像検査を組み合わせて総合的に判断します。

血液検査

血液検査では、肝臓や胆道系の酵素を測定します。具体的には、GOT(AST)、GPT(ALT)、ビリルビン値、ALP(アルカリホスファターゼ)、γ-GTPなどの上昇が重要な指標となります。また、炎症反応を示すCRPや白血球数の増加も、胆管炎の診断に有用です。 急性膵炎を合併している場合は、アミラーゼやリパーゼなどの膵酵素が著明に上昇します。これらの検査値の変化により、結石による胆道閉塞の程度や合併症の有無を評価することができます。

画像検査による確定診断

腹部超音波検査は、総胆管結石の診断において最初に行われる画像検査です。総胆管の拡張や結石による音響陰影を観察することで、結石の存在を推定できます。ただし、腸管ガスの影響や患者さんの体型により、十分な観察ができない場合もあります。 

CT検査では、胆管の拡張や結石の直接的な描出が可能ですが、CTに映らない総胆管結石もあるので注意が必要です。

 MRCP(MR胆管膵管撮影)は、総胆管結石の診断において最も有用な検査の一つです。胆管と膵管の詳細な画像を得ることができ、結石の位置や個数、大きさを正確に評価できます。また、胆管の解剖学的異常や他の病変の有無も同時に確認できます。

総胆管結石の治療

総胆管結石の治療方針は、結石の大きさや位置、患者さんの症状や全身状態を総合的に考慮して決定されますが、内視鏡的治療が第一選択となることがほとんどです。

内視鏡的治療

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を用いた内視鏡的治療が、総胆管結石治療の標準的な方法となっています。この治療では、特殊な内視鏡を用いて十二指腸乳頭部にアプローチし、胆管内に造影剤を注入して結石の位置や個数、大きさを確認した後、胆管の出口を拡張し様々な処置具を用いて結石を除去します。胆管炎を併発している場合は、まず感染した胆汁を排出するためのステントと呼ばれるチューブを胆管内に挿入し、胆管炎が治癒するのを待ちます。炎症が消退し、全身状態が安定してから、結石除去を行います。 

薬物療法

急性胆管炎を合併している場合は、抗生物質による感染制御が重要です。起炎菌に有効な抗生物質を選択し、十分な期間投与します。また、疼痛に対しては鎮痛薬を使用し、患者さんの苦痛を軽減します。 

総胆管結石の予防と生活指導

総胆管結石の多くは胆嚢結石に由来するため、胆嚢結石の予防が重要になります。バランスの取れた食事と適度な運動により、肥満や脂質異常症を予防することが基本です。 食事では、動物性脂肪の摂取を控え、魚や野菜を中心とした和食を心がけることが推奨されます。また、規則正しい食事時間を保つことで胆嚢の収縮を促し、胆汁の停滞を防ぐことも重要です。急激な減量は胆石形成のリスクを高めるため、無理なダイエットは避けるべきです。 既に胆嚢結石がある方は、定期的な検査により結石の変化を観察し、必要に応じて早期治療を検討することが大切です。また、症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診することが重要です。

当クリニックでの総胆管結石への対応

当クリニックでは、総胆管結石の患者さんに対して迅速かつ適切な診断と治療方針の決定を行っています。

迅速な診断体制

腹痛や黄疸などの症状で受診された患者さんに対して、血液検査と腹部超音波検査を迅速に実施し、総胆管結石の可能性を評価します。必要に応じて、提携する専門医療機関でのCTやMRCPなどの精密検査を速やかに手配いたします。 特に急性胆管炎が疑われる場合は、緊急性が高いため、迅速な診断と専門医療機関への紹介を行います。患者さんの症状や検査結果を総合的に判断し、最適な治療方針を決定いたします。

専門医療機関との連携

総胆管結石の治療には専門的な内視鏡技術が必要であるため、経験豊富な専門医との密接な連携を図っています。患者さんの状態に応じて、適切なタイミングでの紹介と、治療後の継続的な管理を行います。 また、胆嚢結石を併存している場合の治療方針についても、消化器外科専門医と連携して総合的な治療計画を立案いたします。患者さんにとって最も負担の少ない治療方法を選択し、安全で確実な治療の実現を目指しています。

当クリニックでは、総胆管結石の診断から治療方針の相談まで、患者さんの状態に応じた最適な医療を提供いたします。胆道系疾患についてご心配な点がございましたら、遠慮なくご相談ください。

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