大腸癌とは
大腸とは消化管の一部で、小腸から続く太い管状の臓器のことです。長さは約1.5メートルほどあり、盲腸や結腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)、直腸にわけられます。
大腸の主な役割は、小腸で消化・吸収されなかった食物の残りかすから水分や電解質を吸収し、便を形成することです。
大腸癌は、大腸の内側を覆う粘膜層に発生する悪性の腫瘍です。ほとんどの大腸癌は、最初は良性のポリープ(腺腫)として発生し、少しずつ癌になると考えられています。癌化する過程にはおよそ10年かかるとされており、この進行の遅さが大腸癌の早期発見や・早期治療に有利に働いているのです。
大腸癌の発症に関わる要素
大腸癌の正確な原因は明らかになっていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています。
- 肉類(特に赤肉や加工肉)の長期間にわたる過剰な摂取
- 高脂肪・低繊維質の食事を長期間続ける
- 野菜や果物をあまり食べない
- あまり運動しない
- 肥満
- 長期間にわたる喫煙の習慣
- 過度の飲酒
- 家族のなかに大腸癌になった人がいる
- 遺伝性疾患(リンチ症候群、家族性大腸腺腫症など)
- 年齢(50歳以上でリスク上昇)
- 炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の既往
- 大腸ポリープの既往
これらのリスク要因が複数重なると、さらにリスクが高まる傾向があります。
大腸癌の主な症状

大腸癌は初期段階ではほとんど症状がないことが多いですが、進行すると以下のような症状が現れることがあります。
- 便秘や下痢を繰り返す
- 便が細くなる
- 鮮血や暗赤色の血便が出る
- 粘液便が出る
- 腹痛や腹部不快感が続く
- 原因不明の貧血を起こす
- 倦怠感が続く
- 体重が著しく減少する
ただし、これらの症状は大腸癌特有のものではなく、他の疾患でも現れることがあります。
大腸癌の検査、診断の方法
健康診断や人間ドックなどで行われる、大腸癌のスクリーニング検査として、便潜血検査があります。便に血液の成分であるヘモグロビンが含まれているかを検査する方法です。便を2回提出する方法が多く、1回でも陽性になった場合は大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)は、肛門から内視鏡を挿入し、全大腸の粘膜を観察する方法です。内視鏡検査で大腸胃内をくまなく観察し、大腸癌を疑う病変が見つかった場合、組織を採取(生検)し病理検査を行います。これで癌細胞が認められれば、大腸癌と診断されます。
その他、バリウム検査、CT検査などを行い、病変の範囲、進展の程度、転移の有無などを総合的に評価し、治療方針の決定を行います。
血液検査では、貧血の有無や、栄養状態、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9など)の測定を行います。ただし、腫瘍マーカーは早期では上昇しないことも多く、スクリーニング検査としては限界があります。
大腸癌の治療法
大腸癌の治療は、ステージや患者さんの全身状態などを考慮して決定されます。
内視鏡治療
早期大腸癌(粘膜〜粘膜下層の一部にとどまるもの)では、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの内視鏡治療が選択されることがあります。低侵襲で体への負担が少なく、入院期間も短いのが特徴です。
外科手術
ステージI〜IIIの多くの症例では、外科手術が基本的な治療法となります。癌のある部分の大腸と周囲のリンパ節を切除します。近年では腹腔鏡手術やロボット支援手術など、より低侵襲な手術も増えています。
化学療法(抗がん剤治療)
ステージIIIやIVなど、再発リスクが高い場合や転移がある場合には、手術と併用して化学療法が行われることがあります。また、手術が難しい進行癌では、化学療法が主な治療となることもあります。
分子標的薬治療
特定の遺伝子変異を持つ大腸癌では、その特性を標的とした分子標的薬が用いられることがあります。
放射線療法
特に直腸癌では、手術前や手術後に放射線療法が行われることがあります。化学療法と併用されることも多いです。
治療法の選択は、癌のステージ、場所、患者さんの年齢や全身状態、希望などを総合的に考慮して決定されます。複数の専門家が集まるカンファレンスで検討されることも多いです。
緩和医療
癌によって生じる痛みや苦しみを緩和する治療が緩和医療です。痛みのコントロールや食事が摂れない時の栄養サポート、精神的な負担の緩和などが該当します。どのステージであっても、癌の積極的な治療と並行して行われます。
大腸癌では、大腸狭窄による通過障害をきたすことがあります。ステント留置により狭窄部を拡げる治療法や通過障害を解除するための手術、がありますが、これも緩和医療に該当します。
当クリニックでの大腸癌の診療
当クリニックでは、大腸癌の早期発見・早期治療を目指して、以下のような診療を行っています。
胃癌検診・診断
当院では大腸内視鏡検査、便潜血検査を行っております。
検診による早期発見
大腸癌は進行が比較的緩やかで、ポリープの段階で発見できれば内視鏡で簡単に切除できることが多いです。定期的な検診が早期発見の鍵となります。
- 40歳を過ぎたら年1回の便潜血検査を受けましょう
- 便潜血検査で陽性だった場合は、必ず大腸内視鏡検査を受けましょう
- 大腸癌の家族歴がある方や、以前にポリープを指摘されたことがある方は、医師と相談のうえ定期的な内視鏡検査を検討しましょう
受診の目安
以下のような症状がある場合は、受診をご検討ください:
- 血便や黒色便が続く
- 便通の異常(下痢と便秘の繰り返しなど)が1か月以上続く
- 原因不明の腹痛が続く
- 体重が急に減少した
- 貧血を指摘された(特に男性や閉経後の女性)
- 便潜血検査で陽性と言われた
- 大腸癌の家族歴がある
これらの症状は大腸癌以外の病気でも現れることがありますが、早めに医療機関を受診して適切な検査を受けることが重要です。
治療および医療連携
大腸癌と診断された場合、どの治療が適応となるかを判断し、必要に応じて専門医療機関をご紹介し、診断から治療後のフォローアップまで一貫したサポートを行います。
患者さんへのサポート
大腸癌と診断された患者さんやそのご家族の不安やご質問にきめ細かく対応し、治療選択や療養生活についてのアドバイスを行います。また、治療後の食事指導や生活指導も行っています。
まとめ
大腸癌は日本人に多い癌ですが、早期発見できれば治る可能性が高い病気です。便潜血検査や大腸内視鏡検査などの検診を定期的に受けることで、早期発見・早期治療が可能になります。
迷っている方も、この機会にぜひ一度、当クリニックで検診を受けてみましょう。