ピロリ菌検査

ピロリ菌について

ピロリ菌は、正式には「ヘリコバクター・ピロリ」という名前の細菌です。胃の中は強い酸性で、普通の細菌は生きていけませんが、ピロリ菌は特殊な仕組みを持っていて、胃酸の中でも生き続けることができ、一度感染すると治療しない限り一生胃の中に感染しています。

ピロリ菌は1983年にオーストラリアの医師によって発見されました。それまで胃潰瘍や胃炎の原因はストレスや食生活だと考えられていましたが、実はこの細菌が主な原因だったことが分かりました。

日本でのピロリ菌感染率は年代によって大きく異なります。現在の70代以上では70％以上、60代では約60％の方が感染していると言われていますが、若い世代では減少傾向にあります。これは戦後の衛生環境の改善により、新しい感染が減ったためです。

ピロリ菌に感染していても、すぐに症状が出るわけではありません。多くの方は何十年もの間、感染に気づかずに過ごします。しかし、その間にも胃の粘膜では慢性的な炎症が続いており、徐々に胃炎が進行していきます。

ピロリ菌感染がもたらす健康への影響

ピロリ菌に感染すると、以下のような健康問題のリスクが高まることが知られています。

慢性胃炎（萎縮性胃炎）

感染者のほとんどが慢性胃炎を発症します。多くの場合は症状がないこともありますが、胃もたれ感や胃の痛みなどを感じることもあります。

消化性潰瘍

胃潰瘍や十二指腸潰瘍の発症に、ピロリ菌感染が関わっています。

胃がん

ピロリ菌感染が引き起こす最も重大な病気が胃がんです。世界保健機関（WHO）では、ピロリ菌を胃がんの確実な発がん因子として認定しています。

ピロリ菌感染により萎縮性胃炎、腸上皮化生、異形成を経て胃がんに至る過程が明らかになっています。感染期間が長いほど、また萎縮の程度が強いほど胃がんのリスクが高くなります。

その他の疾患

特発性血小板減少性紫斑病、鉄欠乏性貧血、胃MALTリンパ腫（胃に発生するリンパ腫）、機能性ディスペプシア（検査で明らかな異常が見つからないにもかかわらず胃の不調が続く状態）にもピロリ菌が関与していることがあります。

ピロリ菌検査の一般的な流れ

ピロリ菌の検査は、通常の保険診療においては、胃カメラ検査で慢性胃炎や萎縮性胃炎など、ピロリ菌の感染が疑われる所見を認めた場合に行うことができます。

健康診断や人間ドックでは、胃カメラ検査を行わずに、ピロリ菌感染の検査を行うこともあります。

ピロリ菌の検査方法

ピロリ菌の検査には、内視鏡を使う方法と使わない方法があります。

内視鏡を使う検査

迅速ウレアーゼ試験

胃カメラ検査中に胃粘膜の一部を採取し、ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素の働きを調べます。約20分程度で結果が分かる迅速な検査です。

組織検査

胃カメラで採取した組織を顕微鏡で直接観察し、ピロリ菌の存在を確認します。結果判明までには数日かかります。

培養検査

採取した胃の組織片を特殊な環境で培養して菌の有無を確認します。抗生物質への反応性も調べられますが、結果が出るまで1〜2週間必要です。

内視鏡を使わない方法

呼気試験

尿素呼気試験は、最も正確で信頼性の高い検査方法です。検査薬を飲んだ後に息を袋に吹き込むだけの簡単な検査で、痛みもありません。ピロリ菌が持つ酵素の働きを利用した検査で、菌がいれば呼気中に特殊な成分が検出されます。

血液検査

血液検査では、ピロリ菌に対する抗体を調べます。採血だけで済む簡単な検査ですが、過去の感染歴も反映するため、除菌後の判定には適さないことがあります。

便検査

便検査では、便の中のピロリ菌の成分を直接調べる検査で、除菌後の判定にも使えます。

尿検査

尿中のピロリ菌抗体を検出する方法で、手軽ですが他の検査法と比べると精度はやや劣ります。

検査精度について

どの検査方法も完璧ではなく、偽陽性や偽陰性の可能性があります。より確実な診断のため、複数の検査方法を組み合わせることもあります。

ピロリ菌検査と除菌治療のメリット

ピロリ菌の除菌に成功すると、様々な良い効果が期待できます。最も重要なのは、胃がんの発生リスクを大幅に下げることです。なるべく若年のうちに除菌を行うことによって、より胃がんの発生リスクを下げることができます。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発もほぼ確実に防ぐことができます。従来は潰瘍の治療をしても再発を繰り返すことが多かったのですが、除菌により再発率を大幅に下げることができるようになりました。

慢性胃炎の進行も止めることができ、場合によっては胃炎が改善することもあります。ただし、すでに起こってしまった萎縮は完全には元に戻らないため、除菌後も定期的な検査は必要です。

まとめ

ピロリ菌検査は胃の健康維持と胃がんなどの深刻な病気の予防に重要な検査です。特に胃の調子が優れない方や50歳以上の方は、一度検査を検討されることをお勧めします。

当クリニックでは、患者さん一人ひとりの状況に合わせた適切なピロリ菌検査を提供しています。陽性と判明した場合は、除菌治療までの一貫したケアも行っています。胃の健康についてご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。