下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ検査)とは
下部消化管内視鏡検査(以下、大腸カメラ検査)は、肛門から内視鏡を挿入して大腸内部を直接観察する検査です。この方法により、大腸ポリープや大腸がんはもちろん、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)、憩室症といった様々な病変を見つけることができます。
現在、大腸がんは日本人がかかるがんの中でも上位に位置しています。早い段階で発見し治療すれば、完治の見込みが高いがんでもあります。大腸カメラ検査は、この大腸がんを早期に見つけるための最も効果的な方法といわれています。
大腸カメラ検査の主な利点
大腸内視鏡検査には以下のような優れた点があります。
- 肉眼での観察:内視鏡によって大腸内部を直に見ることができます
- 発見精度が高い:わずかなポリープや初期段階のがんも見逃さない精度があります
- 検査中の治療も可能:ポリープなどを発見した場合、検査と同時に切除できます
- 組織採取ができる:その場で細胞を採取して、詳細な顕微鏡による診断が可能です
どんな方が受けるべきか
次のような症状や状況がある方は、大腸カメラ検査を検討されることをお勧めします。
症状がある場合
- 便に血が混じる
- 便通パターンの変化(便秘と下痢を繰り返すなど)
- お腹の痛みや不快感が長引く
- 原因が分からない貧血状態
- 急な体重減少
症状がない方でも、定期的な検査を受けることが望ましいです。
症状がなくても検査をすすめられるケース
- 40歳を超えた方(特に50歳以上は定期的な検査が望ましい)
- 便潜血検査が陽性だった方
- 家族に大腸がん患者がいる方
- 過去にポリープや大腸がんが見つかった経験のある方
- 炎症性腸疾患など、経過観察が必要な状態の方
検査前の準備(前処置)
この検査では大腸内部をしっかり確認するため、大腸内をきれいにするための「前処置」が必要になります。
検査数日前からの注意点
検査の3〜4日前からは以下の点に気をつけましょう。
- 食物繊維が豊富な食品(野菜、海藻類、きのこ、豆類など)は控えめに
- 種子を含む食品(イチゴ、キウイ、トマト、ゴマなど)は避ける
検査前日の食事
前日の夕食は消化しやすいものを選び、20時までに済ませましょう。
【食べてもよい食品例】
- うどんやそうめんなどの麺類(具材は少なめに)
- 白身魚の煮物や茹で鶏など低脂肪の肉魚類
- 豆腐料理、卵料理
- お粥やパン(ジャムやバターは少量まで)
【避けた方がよい食品】
- 赤身肉や脂肪分の多い肉
- 乳製品全般
- 野菜類、海藻、きのこ
- 種のある食べ物
検査当日の準備
検査当日は朝食を摂らず、指定された洗腸剤を飲みます。主な洗腸剤としては:
ニフレック®、モビプレップ®、ピコプレップ®、サルプレップ® など
これらを飲むと、1〜2時間ほどで下痢のような排便が始まります。最終的には排泄物が水のように透明になります。
薬の服用について
日常的に薬を飲んでいる方は、事前に医師への相談が必要です。特に以下の薬は注意が必要です:
- 血液をサラサラにする薬(抗凝固薬、抗血小板薬)
- 糖尿病治療薬(特にインスリン)
- 便秘薬
大腸カメラ検査の流れ
1. 問診と前処置確認
まず、医師や看護師からその日の体調、前処置が十分に行われているか(排便が透明になっているか)などについて確認があります。不安なことや質問があれば、この時点で相談しましょう。
2. 検査準備
- 専用の検査着に着替えます
- 血圧測定などその日の体の状態をチェックします
- 点滴を入れます
3. 検査実施
基本的には以下の順序で進みます:
- 体勢:主に左側を下にした横向き姿勢から始めます
- 薬剤投与(鎮痙剤、鎮静剤、鎮痛剤)の投与
- 肛門確認:指による触診で肛門部の状態を確認します
- 内視鏡挿入:肛門から内視鏡を入れ、徐々に大腸奥へと進めます
- 内部観察:大腸最深部の盲腸まで到達後、ゆっくり抜きながら詳しく観察します
- 必要処置:異常が見つかれば、組織採取や病変切除を行うことがあります
検査中は腸を見やすくするため空気を入れるので、お腹が膨らんだ感覚があります。また、内視鏡が腸の曲がり角を通過する際に一時的な痛みを感じることもありますが、呼吸法や姿勢調整で緩和できます。
大腸カメラ検査では、腸の動きを弱めるために鎮痙剤という薬を投与します。また、痛みを伴うことがあるため、患者さんの希望に合わせて鎮痛剤を使用することもできます。
鎮静剤とは、睡眠薬のような薬のことを指します。検査開始直前に鎮静剤を投与することによって、うとうとした状態(軽い睡眠状態)で検査を行うことができます。検査中の不快感や恐怖感を軽減できるメリットがあります。デメリットとしては、検査後にふらついてしまったり、検査当日は車、バイク、自転車などの運転ができなくなります。
大腸カメラ検査の精度と安全性
大腸カメラ検査は、大腸の病変を発見するための最も精度の高い検査方法の一つです。特に大腸がんの発見には非常に有効で、適切な治療につなげることができます。
安全性についても、熟練した医師が実施する場合、重大な合併症が起こる確率は極めて低いとされています。ただし、どんな検査にもリスクはあり、まれに以下のような合併症が起こる可能性があります。
- 消化管穿孔(消化管の壁に穴が開けてしまう)
- 出血(粘膜からの出血、生検やポリープ切除による出血)
- 腹部膨満(空気の貯留による腹部膨満)
- 循環器・呼吸器系の合併症(特に高齢者や基礎疾患のある方)
当クリニックでは検査前に十分な説明を行い、患者さんの状態を慎重に評価した上で検査を実施しています。
まとめ

大腸カメラ検査は、大腸疾患を早期に発見し適切な治療につなげる重要な検査です。特に大腸がんは早期発見・早期治療が効果的であり、定期的な検査が勧められています。
検査前の準備や検査中の不快感に不安を持つ方もいますが、近年は検査技術や前処置方法が改良され、以前より負担が少なくなっています。また鎮静剤の使用により、不安や苦痛を抑えることも可能です。
当クリニックでは、患者さんそれぞれの状態や心配事に配慮し、できるだけ負担の少ない検査を心がけています。検査についてご不明点があれば、どうぞお気軽にご相談ください。