胆嚢結石

胆嚢結石とは

胆石は、胆嚢や総胆管、肝臓にできる結石の総称で、胆汁の成分が結晶化して固まったものです。胆汁は肝臓で作られる消化液で、脂肪の消化を助ける働きがあります。胆汁は胆嚢という袋状の臓器に一時的に蓄えられ、食事をすると総胆管を通って十二指腸に分泌されます。

胆汁の成分バランスが崩れたり、胆嚢の動きが悪くなったりすると、胆汁の成分が結晶化して胆石ができます。胆石のうち、胆嚢内にできた結石を胆嚢結石と呼びます。胆嚢結石の大きさは、数ミリの砂粒のようなものから、30mm程度の大きなものになることもあり、また数も単発のものから多発するものまで様々です。

多くの場合は症状がない「無症候性胆嚢結石」ですが、胆石が胆嚢の出口に詰まると激しい痛みを引き起こし、胆嚢炎などの合併症を起こすこともあります。

胆嚢結石の原因とリスクファクター

胆嚢結石の形成には様々な要因が関係しており、これらの要因が重なることで胆嚢結石ができやすくなります。以前から、年齢、肥満、人種、妊娠・出産経験が、胆嚢結石のリスクファクターとして指摘されていました。

また、胆嚢の収縮機能が低下することによって胆嚢結石ができやすくなります。胆嚢収縮能が低下する因子として、絶食や過度なダイエット、胃の手術などがあります。

胆汁の組成変化も胆嚢結石と関連があり、脂質異常症、高カロリー食、経口避妊薬などの薬剤、肝硬変、クローン病、腸内細菌叢の変化、などが原因となることも指摘されています。

その他に、遺伝的要因も関係しており、家族に胆石の方がいる場合はリスクが高くなります。

胆嚢結石の症状

胆嚢結石が存在しているだけでは、症状はほとんど出ません。結石が胆嚢の出口に詰まったり、総胆管に落ちたりした時に症状が現れます。症状の程度は軽いものから激しいものまで様々です。

無症候性胆嚢結石

胆嚢結石保有者の約70%が無症状であり、健康診断や他の病気の検査で偶然発見されることが多いです。ただし、無症状だからといって一生症状が出ないわけではありません。年間約1~2%の方で症状が現れるとされており、定期的な検査が推奨されます。

胆石発作

胆嚢結石による最も典型的な症状が胆石発作です。胆石が胆嚢の出口に詰まることで起こり、右上腹部に激しい痛みが現れます。痛みは「差し込むような」「えぐられるような」激痛で、背中や右肩に放散することが特徴的です。

痛みは通常、脂っこい食事の1~3時間後に始まることが多く、特に夜間や早朝に起こりやすい傾向があります。痛みは数十分から数時間続き、冷や汗をかいたり、吐き気や嘔吐を伴ったりすることもあります。

痛みは体位を変えても楽にならないのが特徴で、患者さんは痛みのためにじっとしていることができず、歩き回ったり体をよじったりすることがよくあります。

その他の症状

胆石発作以外にも、様々な腹部症状が現れることがあります。食後の腹部膨満感、胃もたれ、ゲップ、軽い上腹部痛などの消化器症状が見られることがあります。

これらの症状は胃腸の病気と間違われることも多く、「胃の調子が悪い」と思って胃薬を飲んでも改善せず、実は胆嚢結石が原因であった、ということもあります。

胆嚢結石の合併症

胆嚢結石は様々な合併症を引き起こすことがあり、中には生命に関わる重篤なものもあります。これらの合併症を予防するためにも、症状がある胆嚢結石は治療を検討する必要があります。

急性胆嚢炎

胆嚢結石が胆嚢の出口に詰まって胆汁の流れが悪くなると、胆嚢の壁に炎症が起こります。激しい右上腹部痛、発熱、悪寒、吐き気・嘔吐などの症状が現れ、重症化すると胆嚢の壁が腐ったり穴が開いたりすることがあります。

総胆管結石・胆管炎

胆嚢結石が総胆管に落ちたものを総胆管結石と呼びます。結石により胆管が詰まると黄疸が現れ、細菌感染を起こすと胆管炎になります。

急性膵炎

胆嚢結石が総胆管の出口に詰まると、膵管の出口も塞がれて急性膵炎を起こすことがあります。激しい腹痛と背部痛が特徴で、重症例では生命に関わることもあります。

胆嚢がん

胆嚢結石は胆嚢がんの危険因子となります。特に、結石が大きい例、数が多い例、有症状例、有症状期間が長い例、などでは胆嚢がん発生のリスクが高いとされています。

胆嚢結石の診断

胆嚢結石の診断は、症状の聞き取りと画像検査により行います。当クリニックでは、患者さんの症状を詳しくお聞きし、適切な検査により正確な診断を行います。

胆嚢結石の診断において、腹部超音波検査がまず行われる画像検査です。体にかかる侵襲がなく、短時間で検査でき、胆石の有無、大きさ、数、位置を正確に把握できます。また、胆嚢炎の合併や胆管の状態も同時に評価することができます。

CT検査は、胆嚢炎などの合併症の評価や、他の病気との鑑別に有用です。造影剤を使用したCT検査により、より詳しい評価が可能になります。

MRCP(MR胆管膵管撮影)は、胆管結石の診断に特に有効で、造影剤を使わずに胆管の詳しい画像を得ることができます。

血液検査では、肝機能検査、炎症反応、胆管系酵素などを調べ、合併症の有無を評価します。胆嚢炎や胆管炎、黄疸がある場合は、これらの値に異常が現れます。

胆嚢結石の治療

胆嚢結石の治療方針は、症状の有無、結石の大きさや数、合併症の有無、患者さんの年齢や全身状態などを総合的に考慮して決定します。

無症候性胆嚢結石の経過観察

症状のない胆嚢結石は、基本的には経過観察となります。定期的な超音波検査により結石のサイズや胆嚢の状態を観察し、症状が現れた場合は治療を検討します。

経過観察中は、脂っこい食事を控える、急激なダイエットを避ける、適度な運動を行うなどの生活指導を行います。

症候性胆嚢結石の治療

症状のある胆嚢結石や合併症を起こした胆嚢結石は、治療の対象となります。現在、最も標準的な治療法は腹腔鏡下胆嚢摘出術です。

腹腔鏡下胆嚢摘出術は、お腹に小さな穴を数カ所開けて、カメラと手術器具を入れて胆嚢を摘出する手術です。従来の開腹手術と比べて傷が小さく、痛みが少なく、回復が早いのが特徴です。胆嚢摘出術は唯一の胆嚢結石の根治治療です。

内科的治療

手術ができない場合や患者さんが手術を希望しない場合は、内科的治療を検討します。胆石溶解薬(ウルソデオキシコール酸)による治療がありますが、効果は限定的で、コレステロール系の小さな胆石にのみ有効です。胆石発作を予防する薬を内服して経過観察することもありますが、いずれの方法も根治を目的とした治療ではありません。

体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は、体外から衝撃波を当てて胆石を砕く治療法ですが、現在ではあまり行われていません。

合併症に対する治療

急性胆嚢炎や胆管炎などの合併症がある場合は、まず炎症を抑える治療を行います。絶食、点滴、抗生物質投与、感染胆汁のドレナージ(体外に排出する方法)などにより炎症を改善させた後に手術を検討します。

胆嚢摘出後の生活

胆嚢摘出により、一過性の下痢、腹部膨満、嘔気、腹痛などの症状が認められることがありますが、多くの患者さんが手術前と変わらない生活を送っています。

手術直後は脂っこい食事で下痢をすることがありますが、時間とともに改善します。食事は少量ずつ分けて摂る、脂肪分を控えめにするなどの工夫により、症状を軽減できます。

長期的な合併症はほとんどなく、定期的な検査も通常は不要です。

胆嚢結石の予防

胆嚢結石の予防には、生活習慣の改善が重要です。バランスの良い食事を心がけ、脂肪分やコレステロールを多く含む食品は控えめにします。ただし、極端な低脂肪食も胆嚢の動きを悪くするため、適度な脂肪摂取は必要です。

適正体重の維持も大切で、肥満は胆石の重要なリスクファクターです。ただし、急激なダイエットでも胆石のリスクを高めるため、ゆっくりとした減量を心がけると良いでしょう。

当クリニックでの胆嚢結石の診療

当クリニックでは、胆嚢結石の診断から治療方針の決定まで、患者さんの状態に応じた医療を提供しています。腹部の痛みや不快感でお困りの患者さんに対して、詳しい問診と身体診察、適切な検査により正確な診断を行います。

胆嚢結石が見つかった場合は、症状の程度や合併症の有無を評価します。無症状の場合は経過観察とし、定期的な検査スケジュールをご提案します。

症状のある胆嚢結石や合併症がある場合は、治療の必要性や方法について詳しくご説明します。手術が必要と判断される場合は、連携医療機関への紹介を行い、患者さんが最適な治療を受けられるように努めます。

また、再発防止のための生活指導も重要な診療内容です。食事内容の改善、体重管理、運動習慣について具体的にお伝えし、患者さんが実践しやすい方法をご提案します。

治療後の経過観察も行い、術後の体調管理や生活指導を継続的にサポートいたします。

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