十二指腸癌とは
十二指腸とは小腸の一部で、胃とつながっている最初の小腸が十二指腸です。十二指腸という名前の由来は、その長さがだいたい指12本分の幅(約25cm)であることから「十二指腸」と呼ばれています。
十二指腸癌は、十二指腸の内側を覆う粘膜層に発生する悪性の腫瘍です。消化器のがんの中では比較的まれで、全消化管がんのなかで約0.3%程度の割合です。
十二指腸癌の症状
十二指腸癌に特異的な症状はありません。早期では無症状のことが多く、症状が現れたときには進行している可能性があります。自覚できる症状としては以下のようなものがあります。
- 腹痛(特に右上腹部や上腹部の痛み)
- 体重の著しい減少
- 継続的な食欲不振
- 吐き気・嘔吐
- 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
- 疲労感が続が続く
- 貧血
十二指腸癌の診断

十二指腸癌の診断は、以下のような検査で行います。
内視鏡検査
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)がもっとも重要な検査です。十二指腸の内部を直接カメラで観察し、異常が見つかれば組織を採取(生検)して病理検査を行います。
超音波内視鏡検査(EUS)
通常の内視鏡に超音波装置を付けた検査で、腫瘍の深さや周囲への広がりを詳しく観察します。
CT検査
体内の断層画像を撮影し、腫瘍の位置や大きさ、周囲臓器への浸潤、多臓器・リンパ節への転移の有無を調べます。
MRI検査
磁気を利用した画像検査で、特に十二指腸に近接している胆管や膵臓の状態を詳しく調べるのに役立ちます。
血液検査
一般的な健康状態や肝機能、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9など)を調べます。
これらの検査結果を総合的に判断して、十二指腸癌の診断と病期(ステージ)の評価が行われます。
十二指腸癌の治療
十二指腸癌の治療は病期や腫瘍の部位、患者さんの全身状態などを考慮して決定されます。主な治療法は以下のようになっています。
内視鏡的治療
早期の十二指腸癌で、特定の条件を満たす場合は、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などの内視鏡治療が検討されます。
外科的治療(手術)
内視鏡では切除できない十二指腸癌に対しては、外科的な治療を行います。腫瘍の位置や広がりによって術式、切除範囲が変わります。
化学療法
進行した十二指腸癌や、手術後の再発予防として化学療法が行われることがあります。
放射線療法
手術が難しい場合や、手術後の補助療法として放射線療法が考慮されることがあります。化学療法と併用して行われることも多いです。
緩和医療
癌によって生じる痛みや苦しみを緩和する治療が緩和医療です。痛みのコントロールや食事が摂れない時の栄養サポート、精神的な負担の緩和などが該当します。どのステージであっても、癌の積極的な治療と並行して行われます。
十二指腸癌では、十二指腸狭窄による通過障害をきたすことがあります。ステント留置により狭窄部を拡げる治療法がありますが、これも緩和医療に該当します。
当クリニックでの十二指腸癌の診療

当クリニックでは、十二指腸癌の早期発見・早期治療を目指して、以下のような診療を行っています。
内視鏡検査(胃カメラ)
最新の内視鏡機器を導入し、鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査を心がけています。経鼻内視鏡(鼻から挿入する細い内視鏡)も対応可能です。
治療および医療連携
十二指腸癌と診断された場合、内視鏡的治療の適応かどうかを判断し、必要に応じて専門医療機関をご紹介します。また、手術や化学療法が必要な場合には、連携する地域の基幹病院をご紹介し、診断から治療後のフォローアップまで一貫したサポートを行います。
患者さんへのサポート
十二指腸癌と診断された患者さんやそのご家族の不安やご質問にきめ細かく対応し、治療選択や療養生活についてのアドバイスを行います。
まとめ
十二指腸癌は比較的まれながんですが、根治するためには早期に発見と適切な治療を行う必要があります。無症状のことも多いですが、腹痛や嘔吐、黄疸などの症状がある場合は、専門医に相談しましょう。
受診の目安である体の不調は十二指腸癌に限らず、他のさまざまな病気で現れるため、自己判断せずに当クリニックにご相談ください。