アニサキス

アニサキスについて

アニサキスは、長さ2~3cm、幅0.5~1mm程度の白い糸状の寄生虫です。通常は海の魚やイカなどの内臓に寄生していますが、魚が死ぬと内臓から筋肉(身の部分)に移動することがあります。人間がこの寄生虫を生きたまま食べてしまうと、胃や腸の壁に潜り込もうとして激しい痛みを引き起こします。

アニサキスが寄生しやすい魚

アニサキスは様々な海の魚に寄生しますが、特に多く見られるのはサバ、イワシ、アジ、サンマ、カツオ、タラ、イカなどです。これらの魚は日本人がよく食べる魚でもあるため、アニサキス症のリスクが高くなります。

サバは特にアニサキスの寄生率が高く、「サバの生食は危険」と言われる理由の一つです。しめサバでも酢の効果だけではアニサキスは死なないため、注意が必要です。イカも寄生率が高く、イカ刺しやイカの塩辛でも感染の報告があります。

地域によってもアニサキスの寄生率は異なり、特に太平洋側で取れる魚での寄生率が高い傾向があります。しかし、どの地域の魚でも完全に安全とは言えないため、生食する際は常に注意が必要です。

アニサキス症の症状

アニサキス症の症状は、寄生虫がどこに潜り込むかによって異なります。最も多いのは胃アニサキス症で、全体の約90%を占めます。腸アニサキス症はやや少なく、まれに腸管外アニサキス症も起こります。

胃アニサキス症

胃アニサキス症では、生魚を食べてから数時間後(通常2~8時間後)に突然激しい上腹部痛が起こります。この痛みは「えぐられるような」「刺されるような」と表現されることが多く、非常に強烈です。痛みは持続的で、時には七転八倒するほどの激痛になることもあります。

痛みと一緒に吐き気や嘔吐も現れることが多く、何度も吐いてしまいます。食欲もなくなり、水分を取ることも困難になることがあります。発熱はあまり見られませんが、痛みがひどい時は冷や汗をかいたり、顔色が悪くなったりすることもあります。

症状の現れ方は個人差があり、軽い胃痛程度で済む場合もあれば、救急車で運ばれるほどの激痛になる場合もあります。

腸アニサキス症

腸アニサキス症は胃アニサキス症よりも症状が現れるまでの時間が長く、生魚を食べてから数日から1週間後に症状が出ることが多いです。主な症状は激しい腹痛で、特に下腹部やへその周りに強い痛みを感じます。

腹痛と一緒に発熱、吐き気、嘔吐、下痢なども起こることがあります。症状が虫垂炎(盲腸)や腸閉塞と似ているため、診断が難しいことがあります。血液検査では白血球の増多が見られることが多く、炎症反応も上がります。

腸アニサキス症では、アニサキスが腸の壁に深く潜り込んで肉芽腫(炎症の塊)を作ることがあり、この場合は手術が必要になることもあります。

アニサキス症の診断

アニサキス症の診断では、まず患者さんから詳しく症状の経過をお聞きします。特に重要なのは、症状が現れる前に生の魚介類を食べたかどうかです。生魚を食べた後の激しい腹痛は、アニサキス症を強く疑う症状です。

胃アニサキス症が疑われる場合は、胃内視鏡検査(胃カメラ)を行います。胃カメラでアニサキスの虫体を直接確認できれば確定診断となります。アニサキスは白い糸状で、胃の壁に頭を突っ込んでいる様子が観察されます。

腸アニサキス症の診断は胃アニサキス症よりも困難です。血液検査では白血球増多や炎症反応の上昇が見られますが、これらは他の病気でも起こります。CT検査で腸の壁の腫れや炎症の様子を確認することもあります。

最近では、アニサキスに対する血液中の抗体を調べる検査も行われるようになりました。ただし、この検査は過去の感染歴も反映するため、現在の症状がアニサキスによるものかどうかの判断には限界があります。

アニサキス症の治療

アニサキス症の治療方法は、症状の部位や程度によって異なります。胃アニサキス症では内視鏡による虫体の摘出が最も確実で効果的な治療法です。

胃アニサキス症の治療

胃内視鏡検査でアニサキスが見つかった場合は、その場で鉗子(つまむ器具)を使って虫体を摘出します。アニサキスを取り除くと、多くの場合は痛みがすぐに和らぎます。虫体の摘出は比較的簡単な処置で、通常は外来で行うことができます。

症状に対する治療として、痛み止めや胃酸を抑える薬を使用することもあります。ただし、根本的な治療は虫体の除去であり、対症療法だけでは完全な治癒は期待できません。

腸アニサキス症の治療

腸アニサキス症では、内視鏡による虫体の摘出は困難なため、保存的治療が中心となります。痛み止め、抗炎症薬、場合によってはステロイド薬を使用して症状を和らげます。

多くの場合、アニサキスは数日から1週間程度で自然に死滅し、症状も改善します。ただし、腸閉塞や穿孔(腸に穴が開くこと)などの合併症が起こった場合は、緊急手術が必要になることもあります。

最近では、アレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬が症状の改善に効果があるという報告もあり、治療選択肢の一つとして検討されています。

アニサキス症の予防

アニサキス症の予防で最も確実なのは、生の魚介類を食べないことです。しかし、日本の食文化を考えると現実的ではないため、リスクを下げる方法を知っておくことが大切です。

加熱と冷凍

アニサキスは熱に弱く、60℃以上で1分間加熱すれば確実に死滅します。焼く、煮る、揚げるなどの十分な加熱調理により、アニサキス症を完全に予防できます。

冷凍処理も効果的で、マイナス20℃以下で24時間以上冷凍するとアニサキスは死滅します。

新鮮な魚を選ぶ

魚が死んでから時間が経つと、アニサキスが内臓から身の部分に移動しやすくなります。そのため、できるだけ新鮮な魚を選び、購入後は速やかに内臓を取り除くことが大切です。

釣った魚をその場で締めて内臓を取り除く、魚屋さんで新鮮な魚を選んでもらうなどの工夫により、リスクを下げることができます。

目視による確認

アニサキスは肉眼でも確認できる大きさなので、刺身を切る時や食べる前に注意深く観察することで発見できることがあります。白い糸状の異物が見つかった場合は、それがアニサキスの可能性があります。

ただし、小さなアニサキスや身の深い部分にいるものは発見が困難なため、目視だけに頼るのは限界があります。

当クリニックでの診療

当クリニックでは、アニサキス症の診断から治療まで、迅速かつ適切な医療を提供しています。生魚を食べた後の激しい腹痛でお困りの患者さんに対して、詳しい問診と身体診察を行い、アニサキス症の可能性を評価します。

胃アニサキス症が疑われる場合は、胃内視鏡検査を行います、虫体の有無を確認し、虫体が確認されたらその場で摘出します。

腸アニサキス症が疑われる場合は、血液検査や画像検査により診断を行い、合併症のリスクがある場合は、専門医療機関への紹介も適切に判断いたします。

生魚を食べた後に激しい腹痛が起こった方、吐き気や嘔吐がひどい方、胃のあたりがえぐられるような痛みがする方、魚介類を食べた後に体調不良が続いている方は、アニサキス症の可能性があります。お早めに当クリニックにご相談ください。患者さんお一人おひとりに合わせたサポートを提供いたします。

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